無駄のないあがき

日々に疲れている全ての人類に癒しを。20代の人間による妄想×銭湯=癒しのブログ。

ニトリの見本商品と長谷川

 

 

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つい先日、ニトリで買い物をしていた際に見本の商品をレジに持っていってしまった。

 

基本的に販売商品は箱に入って陳列されているのだが、

私は人生初めてのニトリでの買い物で浮き足立っていたのか、箱に入っていない、しかも後で気づいたのだが”見本商品”とデカデカと書かれたタグが付いている見本を盛大な勢いでカゴにぶち込んだのだ。思い出すだけでも顔から火が出るような愚行である。

 

恐らく私の奇天烈な行動の一部始終を見ていた人たちは、思ったことだろう。

「So What?」

 

見本商品を大量にカゴに入れてルンルン状態の私は、すっかり安い値段でデザイン・機能の良い商品を売り出すニトリの大ファンになっていた。カゴに入っているのは半分ほど見本商品ということに気づかずに、である。

 

休日で多くの人が訪れていたのか、レジの列は少々混雑していたが、その待ち時間ですらも心地がよい。「お値段以上、とは大したキャッチコピーだ。わっはっはっはっはっ」と心の中で笑いながら、私はカゴの中の鍋をうっとりと見つめ、美味しい肉じゃがを作るイメージトレーニングをしていた。

 

ちなみに鍋には”見本商品”とデカデカと書かれたタグが付いている。その鍋で肉じゃがを作ることは一生ないという事実を、その時は知る由もなかった。

 

私のカゴの中の食器水切りを指先で愛撫していると会計の番がようやく回ってきた。ちなみに水切りにも”見本商品”とデカデカと書かれたタグが付いている。

 

私は「今日はいい買い物できました」という気持ちでレジの長谷川さんにカゴを預けた。長谷川さんがテキパキとレジに商品を通す。

 

早く家に帰って濡れに濡れた食器を水切りで水切りたい、そんなことを考えていた時、長谷川さんが突然「これ、ミホンですね」と呟いた。「あ、これとこれもミホンですね」と畳み掛けた。そして一瞬の間の後、「あー、これもミホンですね」とダメ押した。

 

 

長谷川が店内の誰かに電話をかけ始めた。

 

「ミホン対応お願いしまーす。」

 

電話の向こうの誰かに長谷川はそう伝えた。そして長谷川は私にこう伝えた。

 

 

「これ、見本商品なんです。」

 

状況を理解した私の顔から火が出た。かなりの強火。

 

 

そして会計が中断される。列に並ぶ後ろの人たちからの目線が痛い。

 

先ほど見本対応を長谷川に頼まれた荻江が小走りで駆け寄ってきた。

長谷川が見本商品を荻江に預ける。荻江は恐らく箱に入った販売商品と、私が棚からひったくってきた見本商品を交換してくるのだろう。

「荻江に見本対応をさせてしまった」という事実。恥ずかしさはピークに達した。

 

 

私は”見本商品”とデカデカと書かれたタグが付いているのにもかかわらず、それをカゴに入れてレジまで持ってきた愚か者。人間失格という烙印を押されたような気がした。

目の前の景色が徐々に薄れていく。

 

終わった。私の社会的地位が脅かされ、将来の人生設計が音を立てて崩れ去る。長谷川と荻江に孫の代まで笑われるのだ。ハハ、あいつは見本をレジに持ってきた岡安の孫だぜ、と。

 

 

荻江が小走りで戻ってきたようだ、足音が聞こえる。

長谷川の声がどこか遠くから聞こえる。「5000円になります。」

 

 

薄れゆく意識の中で私は呟いた。

 

 

 

 

「神様、私の目は節穴なのですか?」

 

 

 

長谷川の声が遠くで聞こえる。

「ポイントカードはサービスカウンターで作れますので。またのご利用お待ちしています。」

 

 

またのご利用お待ちしています?この愚かな失敗を犯した私に対して。

 

長谷川は神様だった。

 

神が長谷川という人間の姿形をしてニトリのレジに立ち、見本商品をレジに持ってくるという大罪を犯した私のような愚かな人間に、二度目のチャンスを与えようという意味で「またのご利用をお待ちしています」と伝えたのだ。恐らく荻江は天使か何かに違いない。

 

 

私は以来買い物をする時、それが何処であっても、商品に"見本商品"というタグがついていないか目を血走らせながら確認している。

 

 

 

 

次は見本商品を一つもカゴに入れることなく、ニトリで買い物を完遂する。

 

 

 

これが私の社会人2年目の抱負になります。