無駄のないあがき

映画ネタと妄想のブログ。日々に疲れている全ての人類に癒しを。

TOEICマスター羽賀(未受験)

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「TOEICは全部で120分。2時間の長丁場だ、途中休憩は一切ない。

いかに時間配分を考え、集中力を途切らせず効率よく解き進められるかが鍵となるんだ。」

 

興奮しているのか、羽賀の声がいつもより1オクターブ高い。

 

「よく聞け。まず最初はリスニングだ。リスニングは音声に合わせて解き進めていくので、時間配分は考えなくていい。リスニングパートは約45分で100問ある。」

 

一ヶ月後の初TOEIC受験を控えた僕に、羽賀がTOEICの攻略法について俺が教えてやるよとしつこく言うので、スタバで彼の講義を聞いているのだ。

 

「パート1は凄く簡単だ。写真があって、その内容を選ぶだけの問題だ。選択肢は音源で流れてくる。ここでは1問も落としてはいけない。そう、お前が900点以上を狙うのならなおさらだ。」

 

なるほど、と僕は新作のフラペチーノをストローで吸いながら頷く。

 

「ところで言い忘れていたが、リスニングでは隣の奴のマーク音に惑わされるなよ。

例えば自分はAだと思ったのに、隣の奴がBの選択肢のところでマークを塗り始めたからといってそれに惑わされてはいけない。自分の耳を信じるんだ、自信を持って臨め。」

 

ああ、確かにそれは惑わされるかもな、と思った。

 

「話は戻るがパート1が終わったら次はパート2だ。このパートは設問も選択肢も一切問題用紙に記載されていない。全て自分のリスニング力頼りってわけだ。悩んでしまって、次の問題を聴き忘れるなんてことはご法度だ。気合いを入れていけ。」

 

設問も選択肢もないのかよ。正直リスニングは得意でない。途中で集中力が切れてしまいそうだ。

 

「ところで」と僕は言った。

 

「羽賀って、何回TOEIC受けたことあんの?すげえ詳しそうだけど。」

 

 

羽賀は1ミリも表情を変えずに言った。

 

「ないよ1回も。」

 

 

1回もない、、だと、、????

 

 

我こそはTOEICマスターなりみたいな顔をして、日曜日の10時半に僕を渋谷のスタバに呼び出し、一丁前にTOEICの攻略法について講釈を垂れているお前が1回も受験したことが無い、だと、、?

 

 

「脳内では何万回も受けてるけどね。受験料の合計は5000万をゆうに超えてるね、HAHAHA」

 

羽賀は全く面白く無いことを言っておどけてみせた。

 

「ちなみにパート3は18分ある。今度は選択肢と設問が記載されているから安心しろ。

コツは音源が流れる前に先に選択肢と問題を読み込んでおくことだ。そうすれば聞くポイントや内容も掴みやすい。」

 

落ち着いた口ぶりで彼は講義を続ける。

 

「パート4も一緒だ。先読みしろ。お前ならできる、心配するな。」

 

羽賀はおもむろに立ち上がると僕の肩を叩き、トイレに言ってくると言い残して店の奥へ消えて言った。

 

 

僕はまだ動揺していた。なぜ、1回も受験したことが無い男があそこまで自信いっぱいにTOEICを語れるのか。

 

席に戻ってきたら聞いてみよう。なぜ受けたことが無いのにそんなに詳しいんですか?と。

 

 

しばらくすると羽賀が戻ってきた。

 

 

「なあ、なぜTOEICを受けたことが無いのにそんなに詳しいんだい?」

 

 

羽賀は言った。

 

 

「TOEICって実際受けたらどんな感じなんだろう?どうやって解いたらいいのかな?こんな順番で解いたら時間内に終わるかな?って妄想するのが好きなんだ。

そのためには、形式や時間について知る必要がある。気づいたら詳しくなっていたって感じさ。」

 

 

なぜ、それなら実際に受けてみないんだい?と僕は尋ねた。

 

「もし受けたら、僕の描いていた理想のTOEICと現実のTOEICの答え合わせができてしまう。もしかしたら僕が脳内でなんども解いていたTOEICと現実のTOEICが大幅に乖離している可能性があるじゃないか。僕はその現実に直面するのが怖い。TOEICを妄想で楽しんでいるだけでいいんだ、それだけで僕は人生が楽しい。」

 

 

狂っている、と僕は思った。

 

 

「今日のところはここでおしまいだ。明日はリーディングセクションの説明。

明日も10時半にここに集合だ。リーディングは解く順番が重要だ、詳しくは明日話す。俺はこの後別の人にTOEICの解き方について教えに行かなきゃいけないから、先に帰る。」

 

羽賀はそう言い残して帰っていった。

 

 

 

1回も受けたことないんだよこいつ、と僕は次に講義を受ける顔も知らない人のことを思い、心を痛めた。